進学セミナー西川塾 城星教室 / 十足教室 の日記
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漁船
2024.12.14
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友人がフネを買った。
と言っても「青い海に白いフネ...」の言葉が似あうクルーザーではない。17フィートの漁船である。遠縁にあたる漁業者(漁師)が高齢のためいよいよ漁に出られなくなり、長い間乗ったフネを誰かに譲りたいということだった。
場所は伊東の漁港。地名では「伊東の新井」という。魚市場の横にある船の置き場だった。一口に漁船と言ってもいろいろの形態があり、ここは小型の3人乗りくらいの漁船のhome portとなっている。
「船溜まり」と言ったほうが良いのかも知れない。でもその一方でここは「伊東漁協 西浜揚場組合」という特殊な漁船置き場であり、外部の人間は絶対に入れない
フネはそこにあった。
フネは何故かメートル法ではなくFT(フィート)で長さを言う。飛行機の高度もやはりフィートだ...
ちょっと待て...この大きさのフネは北海道の知床で見た!知床の羅臼港で「コンブ・タコ
漁」をしている小型漁船がこれだった。ヤマハが昭和期に盛んに生産していた船体でW..何とか言う頑丈で長持ちするFRP船だ。
同じFRP製でもマリン・レジャー目的のプレジャーボート凌波性なんてあまり考慮さえていない。「1人か2人だけが釣りをするため」に造られているから「薄くて軽い」設計だ。燃費もイイだろうけれど...軽くて華奢ということだ。うっかりしてテトラポットにガリッ...ガツン...とやっただけで船底どころか船体に亀裂となってしまう。
そこへ行くと漁船は重くて強い「堅牢」という言葉がピッタリだ。
あと、フネは浮かべばイイというものではない。船外機・船内機のエンジンを乗せて海を渡っていくものだから、その他もろもろの性能を要求される。
近海の小型船舶には特に波に対しての性能「凌波性」がどのくらいあるか?が大きな性能の分岐点となる。凌波性とは「波やウネリ」のある海をどれだけ「切り進んで行けるのか」という性能のことだ。前方から接近してくる大波にどう対処したらいいのか?
船舶操縦免許の教習ではテキストで「波にたいして45°に船体を持って行く..」と座学で教え、ビデオ授業で大波を無事に超えるシーンを動画で見せるが...荒れた海の操船はあんなものではない。迫りくる波と波の合間....谷間に船首が向けスロットルを調整しながらフネを持っていく。
あの恐怖は実際に体験した人間でないとわからないだろう。
実際のところ...自船に都合の悪い?波を切り分けないと母港に帰港できない。
漁船はこの能力が極めて高く設計されている。「漁場に早く行く」「獲ったサカナをいち早く持ち帰る」という目的のためだろうと推測される。
要するにすべてを満足させるフネはない...と言うことに帰結する。
漁船は....如何にたくさんの美味しいサカナを獲るか。
プレジャーボートはサカナは釣りたい・できるだけたくさん良い体験をしたい。
相反するのが...まさに漁船とプレジャーボートのようである。
自分は10年以上の長い間...漁船とプレジャーボートを混ぜたような小型艇で釣りをして来た。天候の急変でそれこそ命からがらマリーナに帰ったこともあった。