進学セミナー西川塾 城星教室 / 十足教室 の日記
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祖父と温泉
2024.11.29
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祖父は明治時代に外房の御宿(おんじゅく)から東京に出てきた人間だ。当時の言葉で言うなら「青雲の志」をもって未来の可能性に賭けて上京したのだと....孫の自分は思う。
祖父は温泉が大好きだった。長女の孫だった自分を特に可愛がってくれたのだと思う。自分のお気に入りの温泉によく連れて行ってくれた。
温泉と同時に祖父は写真も大好きで東京は港区の写真倶楽部のメンバーで、ほぼ毎週の休日には近場の「江の島」と一泊で行く「箱根」は定番の撮影コースだったようだ。
私も幼稚園のころだから記憶は断片的だが、温泉好きの祖父と行った箱根は記憶に鮮明である。♫ 箱根の山は天下の険....函谷関もものならず...♫とは祖父がよく口ずさんだ歌の一節である。
古く鎌倉時代には箱根の温泉の癒しの力には定評があったようで「相模風土記」にははこね八湯それぞれの「治療の力と湯質」が詳細に述べられている。
なかでも「堂ヶ島温泉」は早川の谷底にあり、祖父のころから国道から温泉に降るケーブルカーがあったから驚く。秘境とはこういう温泉を言うのだろう。
祖父が何故私を連れて秘境ともいえる温泉に連れて行ってくれたのか.....関東地方の西の果て草津温泉のさらに西にある「湯の平温泉」なんて半世紀前にはよほどの物好きしか行かない温泉だ....
祖父は口下手のほうだった.....語ることのほとんどない祖父と誰もいない奥山の温泉に温まりながら...小学1年のなにもわからない自分は、言葉ではない祖父の言葉を聞いていたように思う。
ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)は 海はその国の英雄たる人間の魂だけでなく海難で亡くなった人間のの魂の思いをも溶かし込んでいる...と言う。
伊豆の温泉もまた同じ.....か。