進学セミナー西川塾 城星教室 / 十足教室 の日記
-
狩野川のナマズ
2022.07.06
-
昔...あれは私がまだ結婚したばかりの梅雨時だったなぁ。もう40年も前だ。
韮山の塾生と約束して釣りに行った。私にしては珍しい淡水の釣り。
「先生、千歳橋の韮山側に朝10時だよ。キジ(エサのミミズ)買って来てね!」
当時私はホンダの軽トラをもっていたから、荷台に大きな「水槽」を載せて狩野川へ急いだ。伊東から亀石峠を越えて...
約束の場所に男子生徒ばかり5人が今や遅しとばかりに待っていた.....
河川敷に軽トラをとめて塾生たちと釣り場に急ぐ。
何が釣れるかわからない。塾生たちは当時はやりの2mくらいのルアーロッドにスピニングリールだ。
生徒と一緒になって狩野川の韮山千歳橋付近のポイントを目指す...生徒は速いが私は当時でもころびそうだった。
早速、狩野川のテトラに乗って釣り始めた.....10号オモリにハリスは長めの30㎝。エサはキジ(ミミズ)。
エサが違うだけでシロギスかハゼ釣りのままの仕掛だ。
投げ込もうとすると韮山教室の「イワオ君」が言う...
「あのね、ココのフナはおいしくてアライにして酢味噌で食べるんだよ。お母さんが今晩食べるから、たくさん釣ってきてネ...だって」
彼の言う通りだった。
「ガツン!」と言うアタリで上がってきたのは30㎝近いマブナだった。ヘラブナなら見るけどここまで大きい「マブナ」は50年間見たことがない!
童謡のふるさと..にあるように「小鮒釣りし、かの川」で、小学生の私は父と釣りの予定がない時はともだちと質当時住んでいた埼玉県の池や沼に学校の休みの日には必ず行ったものだ。懐かしい想い出....
現実に戻る。
狩野川のような大きな川が梅雨時には増水して濁る。が..その流れは神秘的ですらある。
こういう川の状況でヒットするのはニゴイ。
ニゴイは「似鯉」と書くように鯉に似ている。鯉を横に伸ばしたようなサカナだ。
これがニゴイ。雑食性+魚食性の淡水魚。三枚におろして「唐揚げ・フライ」がオイシイとされ、生食刺身においてかつては食味が似ているので「ヒラメ」の代替魚だった。
ちなみに私は小学校1年生の時に利根川の河口...千葉県の銚子に父とハゼ釣りに行ったが、その時に何故か魚市場にいた。
漁港に接岸した旧式のポンポンディーゼルの木造漁船が早朝の漁獲を水揚げしていた。
その中に見たことのない大きな長いサカナがいた。
長~い...鯉に似たサカナ。1m近かったんじゃないかな。
「コレ、なんていうサカナ?」
「おう、それか。そりゃ..セイだ!」
「セイ...say?」
英語かと思った記憶が鮮明だ。
後日それは「ニゴイ」で「セイ」は地域名だと知った。
閉話休題
その時の狩野川韮山河川敷ではなぜかナマズの大きなのが釣れた....いやガンガン入れ食いに近いくらいだ。
ナマズを釣りながら昔何かで聞いたかモノクロの古い映画で見たsceneを思い出していた。それは貧しい武士が...おそらく各藩への仕官がかなわず今でいうなら就活中の侍なのだろう。そんな彼が日中を避けて夕方になると...エサのミミズを掘っては釣りに行く。
当時の江戸は海からも上流の川からも水路が町中にまで掘割になって張り巡らされていた。要するに川船を使った物資の運送「水運」だ。
だからその水路には海のお台場に近いほうには海水魚が、町中のほうには淡水魚が少し濁りのある水の中に豊富にいた。しかもすべての江戸市中の水路はリンクしているから海の満潮と干潮で水位が変わり「いるサカナ」も変わったそうだ。
貧しい武士..浪人が狙うのは「ナマズ」。基本夜行性だから日が落ちると活発にエサを追う。夕方に行けば必ず釣れる。しかも味はその姿に似合わず「淡泊で上品」なのだ。
「これがナマズ?」と誰もが怪しむくらい美味である。
四谷怪談に出てくる伊右衛門が夜釣りで釣るのも「ナマズ」だ。
......という訳。
あまりにも釣れすぎて小さいナマズは狩野川にreleaseした。
ここからが本題。
自宅に持ち帰ったナマズを大金を投じて買った「90cm水槽」に入れた。
その嬉しさと充実感と言ったらない。
人間、みんながやらないことを「やる」ところに意義がある。
しかし...
そのために払った代償は大きかった。
ご存じのようにナマズは「魚食性」だ。他のサカナを食べて生きている。
その事実を忘れていた....
塾から帰り寝ようかな....と思っている午前2時ごろだった。
「バシャ!バシャ!...ガツン!ガツン!」と水槽のほうからものすごい音が聞こえてくるではないか。
生徒指ででもうフラフラになっている私は「ナマズが暴れているんだ」とだけ確認。
朝になって大きな90cm水槽を見ると水はほとんどなくなっていて、一緒に入れておいたフナ・ドジョウ・金魚がいない!2Fの廊下はノアの洪水のようにビシャビシャだ。
大事に狩野川から持ってきたナマズ(45㎝の大物)の仕業だった。
新婚間もない妻からは叱られて...やむなくこのナマズを翌日には狩野川へ返しに行ったことを悔しく思いだす。
人のやらないことをするのは充実感があるが.....ナマズを飼うのはムリだ。
生き餌をいつも準備するのがまず大変。
ナマズは「鯰」とも書く。地震を感知する能力あるらし。でも個人の飼育はやめておこう。
個人のレベルでは....釣る。
持ち帰って、しっかり食する。
または、その場でreleaseする....のいずれを瞬間に選択しよう。
毎晩毎夜...暴れまくるナマズを素人が飼育するのはまずムリだ。
We call it ' cat-fish'......in English.