進学セミナー西川塾 城星教室 / 十足教室 の日記
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夏が来れば思い出す....
2022.06.28
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めまいがするような暑さの中、倒れそうになりながら歩いている。
私は小学校1年生。ここは埼玉県の上福岡市。幼稚園年長組から小3までのあしかけ4年間の多感な幼少期を過ごした....
そこは日本の高度成長期に辛うじて残された最後の自然のパラダイスだった。
自宅から当時の私が1時間かけて歩いた先にそれはあった。
「にば池」....にば池はひょっとすると「二番池」だったかもしれない。
それを確かめる前に小4の春に東京都の練馬区に引っ越したのでいまだにわからない。
懸命にたどりついた「にば池」は古代からの関東平野にあった湿地帯の池そのものだった。水源は川ではなく「池の中心部から湧き出る湧水」だったことを思い出す。
水着で水中メガネをつけて潜ると池の最深部からブクブクと水が湧いていた。その周りには今では絶滅した「タガメ」とか全身が透き通るような「シマドジョウ」が泳いでいた。
この池は湧水の流れの果てに「荒川」につながっていたようだ。
だから「コイ・フナ・ナマズ・ウナギ...」などが豊富に生息していたものだ。幼稚園から小学校低学年の自分にはそんな高級魚を獲るなんて当然ムリ。ひたすらの目的は「アメリカザリガニとトノサマガエル」だった。
後に知ったザリガニ釣りは、濁った水中にいるザリガニをイカゲソのエサで釣るから容易だけれど、透明な池にいるザリガニを小1が捕まえるのは至難のワザだ。
水深1mを移動中のザリガニがなんでこっちの姿が見えるのか....?玉網を入れようとすれば全力で「後進いっぱい!」....深いほうへ逃げる。
でっかいアメリカザリガニの雄は仲間うちで「マッカチン」と呼ばれた。
卵を腹にもったメスザリはリリース。
カエルでも友人の間でアマガエルやヒキガエルなんて飼っているとバカにされる。
最も価値があるのはトノサマガエルだ!
6月~8月に1匹獲ったらLucky....2匹取れたらもう英雄になれる。
名前の通り姿と形が立派である。
アタマがよく、敏感...sensitiveにして人間の近づく気配を数メートル手前で感知。「ポチャン!」と水中へ。
アジ釣りではないが、場数を踏むうちに小学生でも「トノサマガエル」が出没するポイントを覚えるようになる。
こうなるとヤツを見つけて追うのではなく、呼吸が苦しくなって浮上する瞬間を狙う。
玉網を構え蚊に刺されながらベトナムのスナイパーのように自身の存在を消してひたすら待つ....5分か10分間。
「パシャ!」
水中を長い間泳いで苦しくなったカエルは浮上すると数秒間思うように動けない。
その瞬間を「獲る」....息を殺すとはこのことか。
トノサマガエルが獲れた時は本当に嬉しかった。
当時の小学生のピラミッドの頂点は「トノサマガエルを何匹獲ったか?」で決まった。
今でもあの田んぼの中に点在する池や沼が懐かしい....その後数年を経ずして埋め立てられ新興住宅地に変貌した姿を伊豆に移ってから祖父の葬儀に行ったおりに従妹の自転車をかりて「にば池」の地に行ってこの目で見た。
コイやフナ...水生昆虫やカエル・ザリガニはどうしたんだろう。どこへ行ってしまったのか?
経済的価値の弱者はより強大な経済的強者によって滅ぼされて行くのか。
夏が来れば思い出す。