進学セミナー西川塾 城星教室 / 十足教室 の日記
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Atama
2022.03.19
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おかしらとも言う。英語ならLeaderか。
動物も人間も頭をやられたらおしまいである。いかに優れた運動能力があろうともそれをつかさどるのは「脳」だから。
有機的組織である軍隊は戦力をどう使うのか「作戦の実行」がうまく行くか否かは指揮官の能力による。いかに個々の兵士の能力が高くても携行する武器の性能が優れていてもそれは2次的な問題に過ぎない。
だから相手の戦意を喪失させるには敵の指揮官、それもできるだけ上級指揮官を狙う。
歴史上有名な指揮官は何人かあげられようが、海軍では英国のネルソン提督であろう。
日本は近代に入り航海術・造船・海戦のすべて海に関することを当時の最強海軍国であったイギリスに学んだので、旧海軍では理想の海軍軍人として東郷平八郎とともにネルソンを学んだという。
戦闘に先立ち、兵士たちを鼓舞した信号旗の掲揚“England expects that every man will do his duty”(英国は各員がその義務を尽くすことを期待する)は、現在も名文句として残る。
ネルソン提督はトラファルガー沖海戦において敵フランス艦狙撃兵の銃弾に倒れた。当時の小銃はマスケット銃で有効射程は短い。いかにネルソンが艦隊どうしの接近戦を試みたかがわかる。
ネルソンは味方の海軍将兵を励ますために、砲弾・銃弾がかすめてもあえて微動だにしなかったという。Commander-in-chiefの軍服でじっとしているのだから敵にとっては絶好の標的であった。
英国にとっては勝つはずのないフランス・スペインの連合艦隊に大勝利し喜びに沸く一方、艦隊のすべてを失ったくらいの人的損失を負ったのだった。
さらに時代を下り太平洋戦争で沖縄侵攻のアメリカ上陸軍は、あとわずかで沖縄本島を制圧するところで大きな犠牲を払うことになる。
沖縄本島の北部名護の沖に浮かぶ伊江島上陸において、サイモン・バックナー中将が守備隊狙撃兵の銃弾に倒れ死亡。米軍の士気はおおいににぶったという。
近代戦で上級指揮官...それも少将以上の将官が最前線で戦死という例はまずない。
このため、その後の朝鮮戦争・ヴェトナム戦争では指揮官の階級章を簡略化して遠くから双眼鏡で見てもわからない程度にしたという。狙撃兵はできるだけ士官をそれも敵の士気をくじくために中尉以上を狙うからだ。
歴史は繰り返す...というが、今回のロシア軍のウクライナ侵攻でも同じことが起こった。ITに優れるウクライナ軍は敵の無線を傍受、待ち伏せして狙撃兵による精密射撃でロシア軍の指揮官を何人も亡き者にしている。すべて少将以上の軍にとってはかけがえのない宝のような人材ばかりだ。
戦争と国内犯罪の殺人とは明らかに違う。
戦力・国力から考えて絶対に勝てない相手と戦わなければならない運命になったらどうするのか?
相手の弱点を研究し尽くす。そのための準備を命がけでする。
この2つしかないだろう。
ウクライナは必死だ。
考えてはならなかったことを私は考えてしまう。
80年前の日本は....我々の先祖はどんな思いで勝てるはずのない戦争に臨んだのだろう。それを考えないことには同じ日本人としてあまりに思いやりにかけはしないか...