進学セミナー西川塾 城星教室 / 十足教室 の日記
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できるようになりたいんです!
2021.03.21
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勉強ができるようになりたい....これはよい心がけだ。向学心の発露でもある。
ただそのウラに自分の将来を安泰にしたい。具体的にはより豊かになりたい。
そのために必要だからという運転免許のような「道具」として、というのがほとんどの場合だ。
今の日本では当然のことだろう。決して反対はしない。それでよいとも思う。
でも「道具」...toolって何だ?
道具ばかり集めて周囲に自慢している人間の家庭を知ればわかる。
道具はそれを使う人間によって全く違う結果を生む。自分の人生に方向性を与え家族も友人をも物理的経済的に豊かにし、揺るぎない平安を自分の心に見出す....
一方で、ただただ自分のためだけに「道具」を使うとどうなるか....
ここのところが難しい。それは私たちが「何をもって幸福とするか?」「何のために生きるか?」という価値観の問題になるから。
でも自分のために生きるのは虚しいのではないか。多くの場合「カネ」と「モノ」を追及する一生になる。
私の旧友にもいた。
よく勉強するヤツだった。いやそれ以上にいつも勉強していた。家は豊かだったがなさぬ仲の母親。その不安を打ち消す為だったのだろう...
学校図書室、土日には町の図書館に通っては必要な本を検索しては広げて丸一日勉強していた。本当によく勉強するヤツだった。
中学・高校の学年順位はいつも一桁の秀才。大学はC大学の法学部を出た。
法学士の学位を得た後、会社を立ち上げ頑張った.....でも今は行方不明のまま。
彼と机を並べて勉強した昔が懐かしい。あの頃はオレ達、純粋だったなぁ。
唯一友人との違いを考えてみる。
S君は懸命に勉強していたが、それは自分のため...だけだった。良い高校と大学に入り、良い会社に就職すること...家庭的な事情で孤独だった彼はそれこそが唯一の目標になった。
「出世してカネをもうけてやりたいことをやるぞ!」
同窓会で会い、一緒に居酒屋で酒を酌み交わすたびにS君は叫んでいたっけ.....
酒はヘネシーのブランデーしか飲まない...オレなんて焼酎。
人懐っこい..それでいていつも寂しげな秀才。
もうとっくに還暦を過ぎた今、どこでどうしているんだろう。
「何かを勉強すること」が自分の願望を達成するための「道具」と考える人間に訪れる不幸だろう。似たような人間は我々の周囲にいないだろうか。
あんなに勉強ができたのに....と思いだすたびに悲しい。
航海と人の一生は似ている。