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進学セミナー西川塾 城星教室 / 十足教室     の日記

ライギョの達人...Aちゃん

2017.12.13

もう半世紀も前の話である。

当時私は父の仕事の関係で埼玉県の小学校にいた。埼玉県は地図を見ていただくとお分かりのように「おイモ」の形をしている。このサツマイモをごろんと横にしたような埼玉県は西に行くと「秩父の山岳地帯」に熊谷を超えてドンドン北に向かうと水上にいたり谷川岳...やがて新潟県に入る。

その西や北の山岳地帯から流れる多くの川が埼玉県の広い平野を貫流して東京湾へ注いでいる。だから海がない代わりに川・池・沼...所謂(いわゆる)「淡水魚の釣り」が大昔から盛んだった。

そのための修行の場として閑静な住宅地の只中に「釣り堀」なるものが随所に存在していて、近所のご隠居やら土日には小中学生の豆剣士ならぬ「豆釣り師」が腕を磨いたものだ。釣り堀には各種の池があった。

金魚の池..これは幼児用でいつまでもここで釣っていると笑われる。鯉の池には体長50cmもの大物がいてオジサンたちが興奮して釣っていた。時々聞こえてくる話を漏れ伺うと...「釣り堀のコイは泥臭くてイケねえよ。2~3日井戸水で泥抜きしてから食うと意外に食える。冬は鯉こくがいいゾ...」なんてやっている。「ヘラブナの池」にはマニアックな釣り師が真剣な眼差しで目盛りの付いたクジャクの羽根浮きで微妙なヘラのアタリをとっている。

小学校の低学年...そう3年生のころだったか。毎週釣り堀に行きたくたまらないが、小遣いに余裕がない。そのやり場のない無念の思いをいまさらに思い出す。

そんな時に同じクラスの...Aちゃんという子がいた。Aちゃんは宿題をやってこないし毎日のように忘れ物をしては担任の先生に叱られて廊下に立たされていた。当時はこれがあたりまえで「体罰」という言葉すら存在しなかった。

よく覚えていないのだが、Aちゃんに宿題を教えたんだったか算数の時にコンパスを貸してあげたんだったか...そんなことがあった。

そうこうするうちに、とある土曜日の朝学校でAちゃんに会うと(当時は土曜日はお昼で終わり。小学校は午前の3時間のみ)、ニヤニヤしながらこう言った。

「ニシカワ...この間ありがとうな。今日学校が終わったらオマエにライギョ釣りを教えてやるよ。早くメシ食ってオレんちへ来い。道具はあるよ...」

要件しか言わない。まるでshort-mailのようだ。

だいたい皆さんは「ライギョ」をご存じなんだろうか?いや、ネットで調べて定義を覚え写真や動画を見たところで「知っている」ことにはならない。

「実物を見た」或いは「自分で釣ったことがある」または「噛まれた」のいずれか=ライギョを知っている...ということなのだ。

一言で言うなら....あれはもうサカナと言うよりは水中を高速で泳ぐヘビと言ってよい。
魚体のcoloringはサバゲーではあるまいに「カモフラ」である。肉食性で主に小魚やカエル、昆虫を食べている。

.....24インチの自転車を目いっぱいこいでAちゃんの家に着く。

ここぞとばかりにAちゃんが叫ぶ...「遅いぞニシカワ!」

いつもは先生に叱られて一言も言わず涙ぐんでいるAちゃんが、今日変身した!うわっ!
このvitalityが人類を反映させて来た原動力なのだろう。

Aちゃん 「今日の釣りはI佐沼からS河岸川をヤル!いいな!?」
ニシカワ  「ハイ!」

Aちゃん 「釣りの前にエサのカエルを獲るんだ。いいカエルが何匹獲れるかでライギョ
      が決まるぞ!」

息をころしてカエルを獲る。小型のアマガエルより中型のトノサマガエルが圧倒的に良いエサだから腰まで水につかってエサ獲りに夢中になる。

5匹は獲れたろうか....

大事なエサガエルを逃がさないようにバケツ入れた。Aちゃんと釣り場へ急ぐ....うわぁぁ。気が付くと二人とも全力でペダルをこいでいて駆逐艦の戦闘速度のようだ。

もう嬉しくて死にそうになる.....

Aちゃんが用意してくれた「タックル」がまた凄い。

やっと持ち上がるような5mもある竹の延べ竿にPEならぬ「タコ糸」がついている。釣鈎は直結(リーダー?...あるわけがない)。丸セイゴ用のドでかいハリが結んであった。

ここに捕まえたトノサマガエルの「足」をチョンがけでつける。

川の上流に向かって「カエル付きの仕掛け」を投げるんだが、小3で5mの竿を扱うのはツライ。風が強ければなおさらだ。

それでも当時はそんなことを平気で上回るほどに魚影は濃かったのだった。

川面(かわも)にカエルを泳がせていると突然水面がバシャ!と波立ち、物干しざおのような竹竿がガクン!と音を立ててしなる....ライギョだ!

「キタッー!」という声がする方を見るとAちゃんにもドでかいライギョがかかったらしい。2人とも渾身の力を振り絞ってライギョとやり取りだ....

「ニシカワ!バカかオマエ!もっと竿を立てろ!!」

またしても嬉しくて死にそうになる!川に落ちそうだ!

.....あれからもう半世紀である。

Aちゃんはどうしているだろう。

Snakehead - Channa argus 2.jpg1mはゆうにあったライギョ。





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